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アメリカの国際通貨改革は、予告編なしに、本番が始まることになったのである。 新金本位制「フェーズW」の狙いでは、アメリカが考える究極の「金本位制」とは何か。

金本位制の歴史は、金貨が流通していた古典的金本位制時代の「金貨本位制」にプラザ合意を起点とするドルのソフトランディングを誘導していたときであり、万が一、市場でドル急落に追い込まれるリスクも高かったから、そのための保険として「アメリカは世界一の金保有国だ、いつでもドルと金を結びつけるオプションを持っている」ことをアピールするのが狙いだったのではないのか。 つまり、Bーカー財務長官は「ドルへの信認」を引きつけるために「金」を利用したに違いないのである。
始まり、第1次世界大戦と第2次世界大戦に挟まれたいわゆる戦間期のイギリスが、建て前は交換を認めているが本音は交換に応じたくないために考え出した金地金のラージバー(400オンス)取引を導入した「金地金本位制」に移行し、第2次世界大戦後は実質的に免換に応じるのはドルだけで、他国はその唯一「金」とつながりを持つドルと固定相場で結びつくことにより間接的に金と交換が可能だという「虚構の金本位制」といえる「金・ドル本位制」が、1971年8月晦日まで継続していた。 振りかえれば金本位制の歴史は皮肉にも、「金」からだんだん遠ざかる歴史であった。
金本位制の歴史は、「純粋な金本位制」から「金を節約する金本位制」への歴史と言い換えても良い。 どうしてこのような歴史をたどったかといえば、価値の安定を「金」に求める人類の思いと、人間社会の発展が経済活動の拡大に伴い必要とする「貨幣の量」とのある種の二律背反から生じたものと思われる。
「金」を求める人類の思いは「金」の供給が少ないがゆえの希少性への評価であり、一方、経済活動はその自己増殖に応じて「貨幣の量」の拡大を必然的に要求する。 この両者の中間に存在するのが、「自然産金量」である。
  世紀の国際金融は、「自然産金量の壁」との戦いの歴史といってもさしつかえない。 「金本位制」にとっての最大の障害は、「自然産金量の壁」であった。
だが、私は「金本位制」にとって「自然産金量の壁」を乗り越える方法はあると考える。 「自然産金量の壁」を超越するために、アメリカは「変動金本位制」を採用すべきなのである。

「変動金本位制」という新しい金本位制により、アメリカは「21世紀の金本位制」を実現できるのである。 これは歴史上の金本位制の最大の弱点を補う「新金本位制」となりえるのだ。
具体的には、世界の実体経済の成長に応じて通貨供給量を増やしていくために、金価格を2年ないし3年に1度ずつ見直していくのだ。 例えば、OECDの加盟諸国のGDP成長率の平均値を基準として、アジア地域の成長率の平均値をプラスα分として幾分加味していけば良いのである。
戦前の金本位制の最大の欠陥であった、世界経済の成長に応じて増加すべき通貨供給鎧が金の生産高という物理的数量により制約を受けるという問題点を、「金価格の再評価」というスキームを加えることによりクリアできるのである。 アメリカはすでに「金の量の確保」と「金価格支配力の確保」と「石油価格支配力の確保」を完了している。
いつでも「逆N・ショック」の引き金を引ける体制にあるのである。 1995年9月に上梓した『金―新時代への架け橋』で、アメリカに国際通貨戦略会議のようなものが存在するなら、私がそのメンバーだったらどのようなアメリカ主導の21世紀国際通貨体制を具申すべきか、という想定で考えた「フェーズT」「フェーズU」「フェーズV」「フェーズW」を、「唯一超大国アメリカの覇権を維持するシステム」というパッケージで提言した。
5年を経過して今回、改めて検討してみたわけである。 前回と比較して、私の見方が2点変化した。
第1点は、「フェーズU」の「金約款付財務省証券の発行」について、これは当分政策として選択されないだろうと思うようになった。 G氏が提言したときは金委員会の最中であり、第2次石油ショックの後遺症に怯えていたときであった。
超インフレと高金利が当面の敵であった。 R政権2期とB政権の3期12年の共和党政権下で、アメリカは多くを学んだ。
経済ばかりでなく、政治にとってもインフレは最大の敵である。 インフレでもなくデフレでもなく、ディスインフレこそ最善との合意をみた。

N・ショックは、認分的金本位型と変動金本位型冷戦終結による労働市場を含めた世界的規模の市場拡大、さらに、湾岸戦争によりサウジアラビアと一心同体の関係の確証とによって、インフレをコントロール下におく自信を深めたのである。 あの時点でのG氏の低金利による財政健全化のアイディアは、購入者のインフレ心理をテコとした発想であった。
現在では、「小さな政府」をベースとする「ディスインフレ至上主義」が、ニューエコノミーの推進力となっている。 また、G氏の想定した金約款付財務省証券は5年ものと2年ものであり、満期時に元利を「金」で支払うとされていた。
ということは、5年後には「金」は財務省から流出してしまう。 実にもったいないではないか。
似たような「金」の利用方法ではあるが、1996年に「インフレ連動債」が議論されたとき、「金」を使う話も出ていた。 インフレ連動債は満期がはるかに長いので、引き当てた「金」も満期までの長期間財務省から流出しないメリットがある。
「金」を使うならこの方が良いという結論となった。 私が見方を変えた第2点は、「フェーズV」のBーカー財務長官の「金を含む商品バスケット」構想について、すでに述べたように、「ドルの急落」予防のための大芝居であったと見るべきであろう。
付随的には、大統領選挙中でもあり「金本位制復帰」の意欲の強いKンプたちの支持をB副大統領につなぎ止める国内政治の力学が働いていた、ということであろう。 さて、B新政権が2001年1月 日にスタートした。
日本では当選の決まり方から、お手並み拝見的見方が少なくない。 しかし、私の見方は全く異なる。
政権の閣僚は共和党の持てる人材の中のほぼ最高のメンバーが選ばれていると思う。 B新大統領は、N的戦略性と原則論に基づく政治とR的国内経済の大躍進をもたらす内政と大統領職への信頼と敬愛を呼び戻す歴史に名をとどめる大統領に成長していくに違いないと期待している。
B大統領には、このような見方を可能にする追い風が吹き始めている。 それはどのような追い風なのだろうか。
8年間の共和党の「冷や飯時代」のさまざまなシミュレーションが学者、研究者たちによってなされ、その成果が蓄積されている。 それはR大統領の「大幅減税」と「規制撤廃・緩和」の効用の再確認の意味もある。

R政権が行ったように良い種をまけばあのC民主党政権下でも、素晴らしい花は開き実を結んだ、というわけである。 B政権への最大の追い風は何か。
それはいつでも「金本位制復帰」の決断をしても良いだけのほぼ全ての条件が整ったタイミングで、大統領になったことである。 行うべき「金本位制復帰」は、「部分的金本位制」と「変動金本位制」である。
それぞれに、いままで検討してきたメリットがある。

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